VIII-L1 「表示回数は増えたのにクリックは減る」―メディア業界のAIOインパクトデータ
メディア業界のAIOインパクトデータ
このレッスンの狙い:英国調査(Authoritas:AIO表示ページでのクリック率がPC47.5%・モバイル37.7%低下)、米国調査(Digital Content Next:主要紙19社の紹介トラフィックが中央値-10%)、AI経由訪問者の着地傾向(ニュースページへの着地は54%だが全体流入に占める浸透率はわずか0.11%)等、メディア業界に固有の定量データを理解し、自社サイトへの影響度を数字で説明できるようになる。
最終更新: 2026-07-25
この記事の要点
- 英国調査(Authoritas:AIO表示ページでのクリック率がPC47.5%・モバイル37.7%低下)、米国調査(Digital Content Next:主要紙19社の紹介トラフィックが中央値-10%)、AI経由訪問者の着地傾向(ニュースページへの着地は54%だが全体流入に占める浸透率はわずか0.11%)等、メディア業界に固有の定量データを理解し、自社サイトへの影響度を数字で説明できるようになる。
- 英国主要メディアで確認されたクリック率の低下
- デスクトップ
ここからは業種別編の最後、メディア・パブリッシャー業界を見ていきます。結論を先にお伝えすると、メディア業界はAIOの影響が最も定量的に報告されている業界です。ニュースサイトや専門メディアを運営している方はもちろん、オウンドメディアで情報発信をしている企業の担当者にとっても、「検索経由の紹介トラフィックがどう変化しているか」を知ることは他人事ではありません。
英国主要メディアで確認されたクリック率の低下
英国の調査会社Authoritasが2025年4月16日から22日にかけて、英国主流メディアのニュース関連キーワード3,500語を対象に調査したところ、AI Overviewsが表示されたページでは、デスクトップでクリック率が47.5%低下、モバイルでは37.7%低下したと報告されています(出典: Press Gazette, 2025年7月)。AI Overviewsが表示された割合(浸透率)はデスクトップ・モバイルともに12.2%(3,500語中426〜427語)でしたが、「健康」「占い」といった一部カテゴリでは50%まで上昇したとされています。同レポートは「Googleがその気になれば90%以上のクエリでAI Overviewsを表示することは技術的に可能」とも指摘しています。
デスクトップ
- クリック率47.5%低下
- AIO浸透率12.2%
モバイル
- クリック率37.7%低下
- AIO浸透率12.2%
用語解説
「紹介トラフィック(リファラルトラフィック)」とは、検索エンジンや他サイトのリンクを経由して自社サイトに訪問してきたアクセスのことです。メディア業界では広告収益・会員登録の入り口として特に重視される指標です。
米大手メディア19社の実態
米国のDigital Content Next(DCN)が加盟する大手メディア19社を対象に2025年5月から6月の8週間調査したところ、Google検索からの紹介トラフィックは前年同期比の中央値で-10%、企業別に見ると-1%から-25%の幅で下落し、下落した企業数が上昇した企業数を2対1で上回ったと報告されています(出典: Digiday, 2025年8月、Digital Content Next調査)。業種別ではニュース系12社が-7%、非ニュース系7社が-14%と、ニュース以外のメディアのほうが影響を強く受けている点が特徴的です(詳しい理由はL2で扱います)。
個別の例として、あるライフスタイル系出版社では「害虫の駆除方法」に関する検索でクリック率が5.1%から0.6%へ低下し、ある自動車系出版社では検索1位のコンテンツでもクリック率が2.75%から1.71%へ低下(トラフィック全体で25%減)しました。一方でこの自動車系出版社では、検索結果への「表示回数」自体はむしろ7%増加していたという、一見矛盾するような現象も確認されています。
注意
上記の数値は調査対象となったメディア・カテゴリ・期間に基づく平均的な傾向です。自社サイトの記事ジャンルやクエリの性質によって影響の大きさは変わるため、そのまま自社の数値として当てはめるのではなく、「同じ方向の変化が起きていないか」を点検する目安として使ってください。
AI経由の読者はどこに来ているのか
業界横断でAI経由訪問者の着地ページを分析した調査では、メディア/パブリッシャー業界のAI経由訪問者の54%がニュースページに着地しているものの、サイト全体の流入に占めるAI経由の浸透率はわずか0.11%にとどまると報告されています(出典: Search Engine Land, 2026年7月)。
クリック率▲
英国調査ではデスクトップ47.5%・モバイル37.7%低下(出典:Press Gazette,2025年7月)
紹介トラフィック▲
米大手19社で中央値-10%、下落企業が上昇企業の2倍(出典:Digiday,2025年8月)
表示回数は増加も
自動車系出版社では表示回数7%増でもCTRは低下という例あり
AI経由の着地
ニュースページ着地は54%だが全体流入への浸透率は0.11%
つまり「検索に出ている回数」と「実際にクリックされて読まれる回数」は、もはや同じ動きをするとは限らないということです。この表示回数とクリック率のズレこそが、メディア業界特有の課題として本セクションを通じて繰り返し扱うテーマになります。
実践ステップ
- 自社サイトのGoogle Search Consoleで、直近3〜6か月の表示回数とクリック率の推移をジャンル別に確認する
- 表示回数は横ばい・微増なのにクリック率だけ下がっている記事群がないか洗い出す
- 該当する記事群がニュース速報系か、解説・特集系かを分類する
- 「健康」「ハウツー」など、AI Overviewsの浸透率が上がりやすいとされるジャンルの記事を優先的にリストアップする
- 上記の傾向を月次でモニタリングする体制があるか、社内の計測担当と確認する
まとめ
英国・米国の調査はいずれも、メディア業界で「表示はされるがクリックされない」という同じ方向の変化を報告しています。ただし影響の大きさは媒体・ジャンルによって異なり、「健康」「占い」など一部カテゴリはAIOの浸透率が特に高い一方、株価速報のようなリアルタイム性の高い情報は別の性質を持ちます。次のL2では、この違いをクエリの種類ごとに整理し、自社コンテンツのどこから優先的に手を付けるべきかを考えます。
このレッスンはテキストとスライドで学べます。スライドは上のビューアからご覧ください。
確認テスト
選択肢をクリックすると、その場で正誤と解説が表示されます。
Q1. Authoritasの調査によれば、AI Overviewsが表示されたページのクリック率低下は、デスクトップで37.7%、モバイルで47.5%だった
正しくはデスクトップで47.5%、モバイルで37.7%低下しており、本文の数値は左右が入れ替わっている(出典: Press Gazette, 2025年7月)。
Q2. DCN調査における米大手メディア19社の紹介トラフィック変化(中央値)はどれか
Digital Content Next調査で紹介トラフィックは中央値-10%だったと報告されている(出典: Digiday, 2025年8月)。
Q3. AI経由訪問者のうちメディア/パブリッシャー業界でニュースページに着地した割合はどれか
AI経由訪問者の54%がニュースページに着地していると報告されている(出典: Search Engine Land, 2026年7月)。
このレッスンのFAQ
Q. なぜメディア業界はAIOの影響が最も定量的に報告されている業界とされていますか。
英国・米国の複数の調査機関が、AI Overviews表示時のクリック率低下や紹介トラフィックの減少を具体的な数値で報告しているためです。
Q. 「表示回数は増えたのにクリックは減る」現象の具体例は何ですか。
ある自動車系出版社では検索結果への表示回数が7%増加した一方、クリック率は2.75%から1.71%へ低下し、トラフィック全体では25%減少したと報告されています。
Q. AI経由の訪問者は全体流入のうちどれくらいを占めますか。
メディア/パブリッシャー業界のAI経由訪問者の54%がニュースページに着地しているものの、サイト全体の流入に占めるAI経由の浸透率はわずか0.11%にとどまるとされています。