IX-B9 カナダ——AIDA廃案後の「AI法がない国」の戦い方
AIDA廃案後の「AI法がない国」の戦い方
このレッスンの狙い:AI法が廃案になったカナダの規制環境と検索・利用実態を理解し、専用法がない市場でのAIO対応方針を検討できるようになる
最終更新: 2026-07-25
この記事の要点
- AI法が廃案になったカナダの規制環境と検索・利用実態を理解し、専用法がない市場でのAIO対応方針を検討できるようになる
- 検索市場構造——米国とよく似たパターン
- AIDA廃案——「AI法がない国」になった経緯
北米編の最後の各論として、隣国カナダを取り上げます。カナダは、包括的なAI法案が一度は国会に提出されながら廃案になり、その後も再提出されていないという、他の先進国とは異なる位置づけにある市場です。
検索市場構造——米国とよく似たパターン
StatCounterによれば、カナダの検索エンジンシェア(2026年6月時点)はGoogle85.72%・Bing9.79%・Yahoo!2.34%・DuckDuckGo1.52%・Yandex0.30%・Ecosia0.19%です(出典: StatCounter Global Stats, 2026年6月)。米国(Google約85%、Bing約9〜10%)とほぼ同水準で、世界平均よりBingシェアが高いという北米共通のパターンがここでも確認できます。
AIDA廃案——「AI法がない国」になった経緯
カナダの包括的AI法案「AIDA(人工知能及びデータ法)」は、Bill C-27の一部として審議されていましたが、2025年1月6日のトルドー首相辞任・議会閉会に伴い廃案となりました(出典: Montreal AI Ethics Institute, 2025年)。2026年5月時点でAIDAは再提出されておらず、現政権は単独のAI包括法ではなく、プライバシー立法・政策・投資を通じてAI規制を行う方針を示しています。罰則付き審判制度を含む新たな民間部門向けプライバシー法が2025年末〜2026年初頭に提出見込みと報じられています(出典: Osler, 2025年)。
用語解説
「AIDA(Artificial Intelligence and Data Act)」は、カナダが検討していた包括的なAI規制法案の通称です。廃案後の現在、カナダにはEUのAI Actのような単一の包括的AI法は存在せず、既存のプライバシー法・競争法の枠組みでAIを規制する方針が取られています。
規制なき中での監視——競争局の動き
包括的なAI法こそありませんが、監視の目が完全にないわけではありません。カナダ競争局は2024年11月、Googleの広告テック分野での反競争的行為を理由に提訴しています(出典: Canada.ca, 2024年11月)。2025年3月には、既存の競争法がAI主導の共謀・寡占リスクに十分対応できていない可能性があるとの意見が寄せられたとも報告しています(出典: Baker McKenzie Canada Insights, 2025年3月)。「専用のAI法はないが、既存の競争法・プライバシー法でカバーする」という間接的な規制アプローチが、カナダの現在地です。
利用実態は急速に浸透
規制の空白とは対照的に、AI利用は着実に広がっています。ChatGPTのカナダにおけるトラフィックシェアは2026年6月時点で67.9%(9か月前の81.88%から低下)です。Attest社の調査では、カナダ人の56%がChatGPTを試したことがあり、米国(45%)を上回っています(出典: arfadia.com, 2026年)。REMIC・Abacus Data調査(2026年7月)では、18〜29歳のカナダ人の26%が住宅ローン・金融アドバイスにAIを利用し、有資格ブローカー利用の17%を上回ったとも報告されています。
検索市場
Google85.72%・Bing9.79%(2026年6月)
ChatGPTトラフィックシェア
67.9%(9か月前81.88%から低下)
ChatGPT試用率
56%(米国45%を上回る)
若年層の金融AI利用
26%(有資格ブローカー利用17%を上回る)
注意
カナダ企業単体で、施策と成果数値が具体的に紐づいた独立検証済みのAIO成功事例は、本レッスンの調査範囲ではデータ未到達でした。検索で見つかる類の事例はエージェンシーのマーケティング記事が中心で、企業名を伴う一次ソースとしては扱えません。
実践ステップ
- カナダ向け展開では、米国と同様にBingシェアが一定あることを踏まえた対応を検討する
- AIDA廃案後の規制環境(プライバシー法・競争法ベース)を前提に、法令対応の方針を整理する
- ChatGPT・Gemini・Copilotのシェア変動を定期的に確認し、複数プラットフォーム対応を検討する
- 若年層でAIが専門家アドバイスの代替として使われ始めている業種があることを踏まえ、自社業種での状況を確認する
- カナダ特有の企業事例がまだ薄いことを踏まえ、米国事例を参考にしつつ自社で一次データを蓄積する
まとめ
カナダは、包括的なAI法がないまま、AI利用実態は米国以上のペースで浸透しているという独特な市場です。次のレッスンでは、北米編の締めくくりとして、米国・カナダ双方に日本企業が挑む際の実務チェックポイントを整理します。
このレッスンはテキストとスライドで学べます。スライドは上のビューアからご覧ください。
確認テスト
選択肢をクリックすると、その場で正誤と解説が表示されます。
Q1. カナダの包括的AI法案AIDAは、2025年1月の議会閉会に伴い廃案となり、2026年5月時点でも再提出されていない。
2025年1月6日のトルドー首相辞任・議会閉会に伴い廃案となった。
Q2. カナダ人のChatGPT試用率(Attest社調査)は米国と比べてどうか。
カナダ人の56%がChatGPTを試したことがあり、米国(45%)を上回る。
Q3. カナダの検索エンジンシェア(2026年6月)でGoogleに次ぐ2位は。
Google85.72%・Bing9.79%・Yahoo!2.34%の順。
このレッスンのFAQ
Q. カナダのAI法案AIDAはどうなったか。
2025年1月6日のトルドー首相辞任・議会閉会に伴い廃案となり、2026年5月時点でも再提出されていません。
Q. AI法がない中で、カナダにはどんな監視の仕組みがあるか。
競争局が2024年11月にGoogleを広告テック分野の反競争的行為で提訴するなど、既存の競争法・プライバシー法での間接的な規制アプローチが取られています。
Q. カナダのChatGPT利用実態はどの程度浸透しているか。
56%のカナダ人がChatGPTを試したことがあり、米国(45%)を上回っています。