IX-G4 アラビア語LLM対決——ALLaMとJaisは何が違うのか
ALLaMとJaisは何が違うのか
このレッスンの狙い:UAEのJaisとサウジアラビアのALLaMの開発体制・ライセンス・展開先の違いを理解し、国ごとに異なるアラビア語LLMエコシステムを使い分けられるようになる
最終更新: 2026-07-25
この記事の要点
- UAEのJaisとサウジアラビアのALLaMの開発体制・ライセンス・展開先の違いを理解し、国ごとに異なるアラビア語LLMエコシステムを使い分けられるようになる
- 開発体制の違い
- Jais(UAE)
ここまで見てきたUAEのFalcon、サウジアラビアのALLaMに加えて、アラビア語圏にはもう一つの代表的な自国産LLMがあります。それがG42傘下のJaisです。同じ「アラビア語の自国産LLM」でも、UAEのJaisとサウジアラビアのALLaMは開発体制もライセンス方針も異なります。この違いを整理することが、湾岸市場でのAIO設計の土台になります。
開発体制の違い
Jaisは、G42傘下Inception(現Core42)・MBZUAI(Mohamed bin Zayed University of AI)・Cerebrasが共同開発したアラビア語-英語バイリンガルLLMです。Jais 30Bは2023年11月に発表され、2026年2月にはJais 2(8B/70B)のGGUF量子化版が追加され、Apache 2.0ライセンスで公開されました(出典: Core42、MBZUAI、2026年)。さらにMBZUAIとCore42は共同で、気候・持続可能性特化型バイリンガルLLM「Jais Climate」を開発しており、開発陣は「世界初」の気候特化バイリンガルLLMと位置づけています(出典: PR Newswire、2026年)。
一方のALLaMは、サウジアラビアのSDAIA(サウジ・データ&AI庁)配下の国立AIセンターが開発しました。400名超の専門家が5000億アラビア語トークン超のデータセットを用いて開発し、Arabic MMLUベンチマークでアラビア語生成モデル世界最高評価を獲得したとされています(出典: Saudi Press Agency、2026年)。パラメータ規模は70億〜700億の複数バリアントで、7B版は2025年3月にHugging Faceへ公開されました。
Jais(UAE)
- G42傘下Inception(Core42)・MBZUAI・Cerebrasの共同開発
- Jais 30B(2023年11月)→Jais2(2026年2月・Apache 2.0)
ALLaM(サウジアラビア)
- SDAIA配下の国立AIセンターが開発
- 400名超・5000億トークン超・7B〜70Bバリアント
展開先の違いも見ておきたい
ライセンスと展開先にも違いがあります。Jais 2はApache 2.0ライセンスで公開され、オープンソースコミュニティでの利用がしやすい形になっています。一方ALLaMは2024年5月にIBM watsonxへ、その後Microsoft Azureへも展開され、法人向けアラビア語AI基盤としてマルチクラウドで提供されています(出典: Sharikat Mubasher、2026年)。「オープンに公開して広く使われることを狙うJais」と「エンタープライズクラウド経由で法人導入を進めるALLaM」という展開戦略の違いは、日本企業がどちらのエコシステムに接点を持つべきかを考えるうえで重要な軸になります。
ポイント
どちらか一方だけを追うのではなく、UAE向けの情報発信・提携ではJais/Falconのエコシステム、サウジアラビア向けではALLaM/HUMAINのエコシステムという形で、国ごとに軸足を分けて考えることが実務的です。
日本企業への示唆
自社のコンテンツやプロダクトがアラビア語圏で引用されるかどうかを考えるとき、どちらのLLMが優勢かという二択で捉えるのではなく、国ごとに異なる自国産LLMが存在するという構造そのものを前提に置くことが重要です。UAE向けにはJais/Falcon、サウジアラビア向けにはALLaMという形で、進出国に応じてエコシステムを使い分ける発想が必要になります。
実践ステップ
- JaisがG42傘下・ALLaMがSDAIA傘下という開発体制の違いを整理する
- Jais2がApache 2.0で公開されている点と、ALLaMがwatsonx/Azure経由で法人提供されている点を区別する
- UAE向けとサウジアラビア向けで、参照すべき自国産LLMのエコシステムを分けて考える
- 両モデルとも英語だけでなくアラビア語ネイティブの評価軸(Arabic MMLU等)で語られている点を踏まえる
- 次のレッスンで、アラビア語特有の方言・RTL表示という実務面の壁を具体的に学ぶ準備をする
まとめ
UAEのJaisとサウジアラビアのALLaMは、どちらも「自国産アラビア語LLM」という共通点を持ちながら、開発体制・ライセンス・展開先が異なります。日本企業がアラビア語圏を検討する際は、この違いを国ごとのエコシステムとして理解しておくことが出発点になります。次のレッスンでは、アラビア語AIOが直面する方言・RTL・現地プラットフォームという実務上の壁を整理します。
このレッスンはテキストとスライドで学べます。スライドは上のビューアからご覧ください。
確認テスト
選択肢をクリックすると、その場で正誤と解説が表示されます。
Q1. Jaisは、SDAIA配下の国立AIセンターが開発したアラビア語-英語バイリンガルLLMである。
正しくは、JaisはG42傘下Inception(Core42)・MBZUAI・Cerebrasが共同開発し、SDAIA配下の国立AIセンターが開発したのはALLaMです。
Q2. Jais 2(8B/70B)はどのライセンスで公開されたか?
2026年2月にGGUF量子化版が追加され、Apache 2.0ライセンスで公開されました。
Q3. ALLaMの7B版がHugging Faceへ公開されたのはいつか?
7B版は2025年3月にHugging Faceへ公開されました。
このレッスンのFAQ
Q. MBZUAIとCore42が共同開発している気候特化型LLMは何ですか?
「Jais Climate」で、開発陣は「世界初」の気候特化バイリンガルLLMと位置づけています。
Q. JaisとALLaMの展開戦略の違いは何ですか?
Jaisはオープンに公開して広く使われることを狙う一方、ALLaMはエンタープライズクラウド経由で法人導入を進める展開戦略の違いがあります。
Q. 日本企業がアラビア語圏を検討する際、どのような発想が重要とされていますか?
UAE向けにはJais/Falcon、サウジアラビア向けにはALLaMという形で、国ごとに異なる自国産LLMのエコシステムを使い分ける発想が重要とされています。