IX-K5 世界の規制カレンダー——公開前チェックの国際版
公開前チェックの国際版
このレッスンの狙い:EU・韓国・中国・ベトナム・ブラジルの規制施行時期を横断して整理し、公開前チェックリストとして運用できるようになる
最終更新: 2026-07-25
この記事の要点
- EU・韓国・中国・ベトナム・ブラジルの規制施行時期を横断して整理し、公開前チェックリストとして運用できるようになる
- すでに動き出している規制
- まだ確定していない規制もある
海外向けにAI生成コンテンツを公開する前に、その国の生成AI関連規制がいつ・何を求めているかを確認する習慣は、事故を防ぐ最低限のコストです。今回は、これまで見てきたEU・韓国・中国・ベトナム・ブラジルの規制を、公開前チェックの国際版カレンダーとして整理します。
すでに動き出している規制
EU
Article50(AI生成コンテンツの表示義務)が2026年8月2日に適用開始
韓国
AI基本法が2026年1月22日施行、透明性表示に1年の猶予期間
中国
生成AI標識弁法(表示義務)が2025年9月1日施行済み
ベトナム
AI法が2026年3月1日施行、高リスクは2027年9月まで猶予
ブラジル
PL2338は下院審議中、2026年8月の採決を目指す見通し
EUのArticle50は、チャットボット・ディープフェイク・AI生成テキストの表示義務を定めており、公的関心事項でのAI生成テキストには出所表示が求められます。中国では生成AI標識弁法により、AI生成のテキスト・画像・動画に「明示的表示」と「暗示的表示(メタデータ)」の両方が義務化されています。韓国のAI基本法は、生成AIサービスの利用者への事前通知義務と、現実と区別困難な生成物への明確なラベル表示義務を定めています。
用語解説
生成AIコンテンツの表示義務(ラベリング)とは、AIが生成したテキスト・画像・動画であることを、利用者が知覚できる形で示す規制上の要件です。国によって「明示」の水準や適用範囲が異なるため、複数国展開時は国別に確認が必要です。
こうした表示義務は、AIOの実務にも間接的に関わってきます。生成AIコンテンツの出所表示・ラベリングを怠ったまま公開したページが、後から規制違反として指摘されれば、そのページ自体の信頼性が問われかねません。中央アジアのカザフスタンも2026年1月にリスクベースの包括的AI法を施行しており、本レッスンで扱う主要5か国以外でも、同じタイミングで規制が動いている国があることは覚えておく価値があります。
時系列で並べ直すと、施行が先行しているのは中国、続いて韓国・ベトナム、最後にEUという順序になります。
- 2025年9月:中国 標識弁法が施行
- 2026年1月:韓国 AI基本法が施行
- 2026年3月:ベトナム AI法が施行
- 2026年8月:EU Article50が適用開始
まだ確定していない規制もある
ブラジルのAI規制法案PL2338は、2024年12月10日に上院で修正案が可決されましたが、2026年時点で下院審議中であり、成立時期・内容は未確定です。「施行済み」と「審議中」を混同しないことが、複数国を相手にする実務では特に重要です。EU域内でも、高リスクAIシステムへの義務適用は当初2026年8月の予定から2027年12月へ延期する提案が進んでおり、規制は一度決まった日程通りに進むとは限りません。
注意
規制の施行日・適用範囲は途中で延期・修正されることがあります。本レッスンの日付は本編作成時点(2026年7月)のものであり、公開前には必ず各国の公式発表で最新状況を確認してください。
実践ステップ
- コンテンツを公開する国・地域を洗い出す
- 各国のAI関連法規制の施行日・適用範囲を一覧化する
- 生成AIコンテンツの表示義務(ラベリング)が自社コンテンツに該当するか確認する
- 「施行済み」「審議中」「延期」のステータスを区別して記録する
- 公開前チェックリストとして社内で共有し、定期的に更新する
まとめ
世界の規制カレンダーは、国ごとにバラバラのタイミングで進んでいます。EUの透明性義務(2026年8月)、韓国のAI基本法(2026年1月)、中国の標識弁法(2025年9月施行済み)、ベトナムのAI法(2026年3月)、ブラジルの審議中法案という違いを理解した上で、公開前チェックの仕組みを持つことが海外AIOの実務では欠かせません。次のレッスンでは、こうした国際展開を支える計測とモニタリングの設計を見ていきます。
このレッスンはテキストとスライドで学べます。スライドは上のビューアからご覧ください。
確認テスト
選択肢をクリックすると、その場で正誤と解説が表示されます。
Q1. 中国の生成AI標識弁法(表示義務)は2025年9月1日に施行済みである。
中国の生成AI標識弁法は2025年9月1日に施行済みです。
Q2. 施行日を時系列で並べたとき、最も早く施行されたのはどれか?
2025年9月に中国の標識弁法が施行され、時系列で最も早い施行です。
Q3. EUのArticle50はいつから適用開始されるか?
Article50は2026年8月2日に適用開始されます。
このレッスンのFAQ
Q. 韓国のAI基本法は透明性表示についてどのような猶予期間を設けていますか?
AI基本法は2026年1月22日施行で、透明性表示に1年の猶予期間があります。
Q. EU域内の高リスクAIシステムへの義務適用は、どのような延期提案が進んでいますか?
当初2026年8月の予定から2027年12月へ延期する提案が進んでいます。
Q. ブラジルのPL2338について、施行済みか審議中かはどう区別すべきですか?
2026年時点で下院審議中であり、成立時期・内容は未確定のため、「施行済み」と「審議中」を混同しないことが重要です。