IX-C7 イギリス——Online Safety ActとICOが描くAI検索環境
Online Safety ActとICOが描くAI検索環境
このレッスンの狙い:英国のOnline Safety Act拡大方針とICOの権限強化を理解し、英国向けAIチャットボット提供時の規制対応を検討できるようになる
最終更新: 2026-07-25
この記事の要点
- 英国のOnline Safety Act拡大方針とICOの権限強化を理解し、英国向けAIチャットボット提供時の規制対応を検討できるようになる
- 現行OSAの対象は限定的
- 「抜け穴」を塞ぐ方針への転換
欧州総論から各国編に入ります。まずはイギリスです。英国のAI規制は「コンテンツの内容」から「AIの機能そのもの」へと、重心が移りつつあるという変化が起きています。今回はOnline Safety Act(OSA)とICOの動きから、英国のAI検索環境を整理します。
現行OSAの対象は限定的
Ofcomの公式解説によれば、現行のOSA Part 3が対象にしているのは「ユーザー生成コンテンツ」または「検索結果として遭遇したコンテンツ」のみで、1対1のチャットボット対話内容そのものは対象外です(出典: Ofcom公式)。
用語解説
Online Safety Act(OSA)とは、英国のオンライン安全に関する法律です。違法コンテンツ規制の対象範囲は当初「ユーザー生成コンテンツ」「検索結果」に限定されており、チャットボットとの1対1対話は明確な対象外とされてきました。
「抜け穴」を塞ぐ方針への転換
英政府はOSAの適用範囲拡大を表明し、Crime and Policing Bill修正でスタンドアロンAIチャットボットが違法コンテンツ生成の規制対象外になる「抜け穴」を塞ぐ方針を示しています(出典: Lewis Silkin, 2026年2月23日)。規制の重心は「コンテンツ内容」から「未成年リスクを構造的に高める機能」へ移行しつつあるとされ、ICOが所管する児童向けコード(Children's Code)との整合強化が進められています。
- 現行:ユーザー生成コンテンツ・検索結果のみが対象
- 転換:スタンドアロンAIチャットボットの抜け穴を塞ぐ方針を表明
- 今後:未成年リスクを高める機能への規制へ重心移動
(出典: Lewis Silkin, 2026年2月)
ICOの権限拡大
ICOは2025年3月〜2026年4月の1年間で英国全体3,380万ポンドの制裁金を科しました(AI企業限定ではなく同期間の総額)。Data (Use and Access) Act 2025によりICOの権限がAI・自動意思決定領域に拡大し、AI専用の実務規範(Code of Practice)策定が国務大臣からICOへ指示される枠組みが新設されています(出典: MLex、bratby.law, 2025年)。
注意
制裁金3,380万ポンドはAI企業限定の金額ではなく、英国全体の総額です。「AI企業への制裁金」と誤読しないよう注意してください。
英国の検索市場の姿
英国の検索市場シェア(2026年6月)はGoogle 91.19%・Bing 6.22%・Yahoo! 1.25%・DuckDuckGo 0.71%・Ecosia 0.32%となっており、欧州主要国の中でも比較的Google依存度の高い市場です(出典: StatCounter, 2026年6月)。
AI投資と地域差の報告例
英Lloyds Business Barometerでは、英企業の66%がAI投資済で、うち87%が生産性向上・48%が利益向上を報告しているという調査結果が紹介されています。地域別ではロンドン78%が最高で、スコットランド46%・ウェールズ48%は相対的に低い水準にとどまるという報告例もあります(出典: seostrategy.co.uk記事内引用、一次のLloyds公式レポート未確認のため参考値扱い)。AI投資の水準は英国内でも地域によって差があるという点は、拠点展開を検討する際の参考情報になります。
実践ステップ
- 自社の英国向けサービスにチャットボット機能があるか棚卸しする
- Crime and Policing Billの改正動向を定期的にチェックする
- 未成年ユーザーが利用する可能性のある機能について、Children's Codeとの整合を確認する
- ICOのAI専用Code of Practice策定状況をフォローする
- 英国市場のStatCounterデータを踏まえ、Google中心の対応で十分かを判断する
まとめ
英国のAI規制は、これまでコンテンツ内容に限定されていたOSAの対象を、AIチャットボットの機能そのものへ広げる方向に動いています。ICOの権限拡大とあわせ、「未成年リスク」を軸にした規制強化が今後の焦点です。次のレッスンでは、ドイツのB2B市場で報告されている「96%が初期AI調査で不可視」という数値を扱います。
このレッスンはテキストとスライドで学べます。スライドは上のビューアからご覧ください。
確認テスト
選択肢をクリックすると、その場で正誤と解説が表示されます。
Q1. 英国のICOが2025年3月〜2026年4月の1年間に科した制裁金3,380万ポンドは、AI企業限定の金額である。
正しくは英国全体の総額であり、AI企業限定ではありません。
Q2. 現行のOnline Safety Act(OSA)Part3の対象に含まれないのは。
チャットボットとの1対1対話は現行OSAでは明確な対象外とされてきた。
Q3. 英国の検索エンジンシェア(2026年6月)でGoogleに次ぐ2位は。
Google91.19%・Bing6.22%・Yahoo!1.25%の順。
このレッスンのFAQ
Q. 現行のOSAはチャットボットとの1対1対話を規制対象にしているか。
いいえ、現行のOSA Part3は「ユーザー生成コンテンツ」「検索結果として遭遇したコンテンツ」のみが対象で、1対1対話は対象外です。
Q. 英国政府はこの「抜け穴」にどう対応しようとしているか。
Crime and Policing Bill修正でスタンドアロンAIチャットボットが規制対象外になる抜け穴を塞ぐ方針を示しています。
Q. ICOの権限はどう拡大しているか。
Data (Use and Access) Act 2025によりAI・自動意思決定領域に権限が拡大し、AI専用のCode of Practice策定が国務大臣から指示される枠組みが新設されています。