II-C10 非英語圏AI検索(DeepSeek・百度・Naver等)を押さえる
中国・韓国など、英語圏以外で存在感を強めるAI検索プレイヤーの動向
このレッスンの狙い:非英語圏の主要AI検索プレイヤーとその特徴を説明できる
最終更新: 2026-07-23
この記事の要点
- 非英語圏の主要AI検索プレイヤーとその特徴を説明できる
- なぜ英語圏のノウハウがそのまま使えないのか
- DeepSeekと百度は仕組みがまるで違う
AI検索と聞くとChatGPTやGoogleを思い浮かべがちですが、中国語圏・韓国語圏には独自に発達した検索エコシステムがあります。DeepSeek・百度(Baidu)・豆包(Doubao)・Naverという主要プレイヤーの仕組みの違いを押さえ、自社が本当にこの領域へ投資すべきかどうかを判断する基準まで整理します。
なぜ英語圏のノウハウがそのまま使えないのか
非英語圏AI検索とは、Google・ChatGPT・Perplexityのような英語圏発のAI検索エンジンとは別に、特定の言語圏や規制圏で独自に発達した生成AI検索サービス群を指します。中国では「主権AI(ソブリンAI)」政策のもとGoogleなどグローバルAIモデルが実質的に利用しづらい環境にあり、韓国ではNaverが自国語検索で圧倒的なシェアを持つなど、英語圏のAIOノウハウがそのまま転用できない独立した生態系になっています(出典: genai-ai.co.jp, 2026年7月確認)。
主要プレイヤーは大きく2タイプに分かれます。(A)対話型AIチャットボットにリアルタイムWeb検索機能を後付けしたタイプ(DeepSeek・豆包)と、(B)既存の検索エンジン・ポータルに生成AI回答層を載せたタイプ(百度・Naver)です。(A)は編II-C1のChatGPT Search(Bing依存)と似た構造を取りやすい点も覚えておくとよいでしょう。
DeepSeekと百度は仕組みがまるで違う
DeepSeekは自社検索インデックスを持たず、質問ごとに複数のWeb情報源をリアルタイムに巡回して回答を組み立てます(出典: Trakkr, 2026年7月確認)。推論モデルR1は思考過程を可視化し、どのソースをなぜ採用したかまで表示する点が特徴です(出典: tryprofound, 2026年7月確認)。
一方百度(ERNIE Bot)はBaidu検索の自社インデックス上にAI回答を載せる方式で、百度百科・百家号・知乎など中国語ソースへの偏重が強く、欧米ソースのカバレッジは弱いとされています。可視性確保には中国語コンテンツの整備、百度百科への掲載、百度站長平台への登録が重視されます(出典: GEO Compass, 2026年7月確認)。「DeepSeekや豆包さえ見ておけば百度は終わった存在」というのは早計で、B2Bや権威性が問われる情報では依然として百度の存在感が大きいとされています。
豆包はByteDanceのエコシステム全体で勝負する
豆包(Doubao)はByteDance運営で、キーワード一致よりも意味理解とユーザー意図の把握を優先し、Web・SNS・専門データベースなど複数ソースを統合します。鮮度・話題性の高いコンテンツへの重み付けが強く、抖音(Douyin)や今日頭条(Toutiao)とのコンテンツ一貫性が引用優先度の向上につながるとされています(出典: OranGEO, 2026年7月確認)。2026年3月には豆包が中国国内で百度ERNIE Botを初めて上回り最大手になったと報じられました(出典: KrAsia/Caixin Global, 2026年3月)。
Naverは「自社プロパティ優遇」が最大の特徴
Naverの対話型AI検索「Cue:」は2025年3月に事実上終了しました(出典: 10원 Tips, 2025年3月)。その知見は統合検索最上部に表示される生成AI要約「AI Briefing」に引き継がれています(出典: The Egg, 2026年7月確認)。引用選定は①クエリが要約生成の対象か、②候補プールにNaverブログ・カフェなど自社系コンテンツが存在するか、③見出し直下60語程度で自己完結しているか、という3段階のゲートを経ます。引用元の内訳は約7割がNaver自社ブログ・カフェで、外部のオープンウェブは3割にとどまります(出典: Arfadia, 2026年7月確認)。2026年2月末時点でNaverの日次検索シェアは70%を超えたとの報告もあり、「AIで得た回答をNaverで裏取りする」需要がシェアを押し上げているとの分析があります(出典: BigGo Finance, 2026年2月)。
投資すべきかどうかを判断する基準
非英語圏対応にはローカライズやエンティティ整備などそれなりのコストがかかります。次の4点のうち1つでも当てはまるかで投資要否を判断すると実務的です。①越境ECで中国・韓国の消費者へ直接販売している ②訪日中国人・韓国人観光客が主要顧客層である ③中国・韓国に現地法人や拠点がある ④中国語・韓国語ネイティブ向けにB2B商談を行っている。いずれも非該当なら、現時点ではGoogle・ChatGPT等の英語圏AIOにリソースを集中したほうが合理的です。
実践ステップ
- 上記4条件のうち自社が該当するものがあるかを棚卸しする
- 該当する場合、百度百科/搜狗百科/Baike.comまたはNaverプレイス/Naverブログに自社情報が存在し内容が一致しているか確認する
- 単純な機械翻訳ではなく、小紅書・抖音(中国)やNaverブログ・YouTube(韓国)向けのネイティブ品質コンテンツを検討する
- 現地法人がある場合、データローカライゼーションや備案登録の要否をマーケティング部門とは別に法務側で確認する
- AI検索経由の引用・言及を通常のSEOとは別のKPIラインとして追跡する
まとめ
非英語圏のAI検索は、DeepSeekのような都度検索型、百度のような自社インデックス型、豆包のようなエコシステム統合型、Naverのような自社プロパティ優遇型と、仕組みも引用の癖もまったく異なります。英語圏で効いた対策がそのまま通用する保証はありません。すべての事業者が今すぐ手を広げる必要はなく、越境EC・インバウンド・現地法人の有無という基準で投資要否を見極めることが先決です。要するに、手を広げる前にまず「自社に関係があるか」を確認しましょう。ここまで見てきた10のエンジンについて、次は「インデックス源」という軸で横串を通していきます。
このレッスンはテキストとスライドで学べます。スライドは上のビューアからご覧ください。
確認テスト
選択肢をクリックすると、その場で正誤と解説が表示されます。
Q1. 2026年3月、豆包(Doubao)が中国国内で百度ERNIE Botを初めて上回り最大手になったと報じられた。
2026年3月には豆包が中国国内で百度ERNIE Botを初めて上回り最大手になったと報じられています。
Q2. Naverの引用元の内訳として本文が示す数字はどれか。
引用元の内訳は約7割がNaver自社ブログ・カフェで、外部のオープンウェブは3割にとどまります。
Q3. 本文が挙げる、非英語圏AI検索への投資要否を判断する4条件に含まれないものはどれか。
4条件は越境EC・訪日観光客・現地法人拠点・ネイティブ向けB2B商談であり、従業員数は含まれません。
このレッスンのFAQ
Q. DeepSeekと百度は同じ仕組みで動いていますか?
いいえ、まるで違います。DeepSeekは自社検索インデックスを持たず質問ごとに複数のWeb情報源をリアルタイムに巡回するのに対し、百度(ERNIE Bot)はBaidu検索の自社インデックス上にAI回答を載せる方式で、中国語ソースへの偏重が強いとされています。
Q. すべての事業者が非英語圏AI検索に対応すべきですか?
いいえ。越境EC・インバウンド観光客が主要顧客・現地法人の有無・現地語ネイティブ向けB2B商談という4条件のいずれかに該当する場合に投資を検討するのが実務的で、非該当なら英語圏AIOにリソースを集中したほうが合理的とされています。
Q. Naverの対話型AI「Cue:」は現在も使われていますか?
いいえ。Naverの対話型AI検索「Cue:」は2025年3月に事実上終了し、その知見は統合検索最上部に表示される生成AI要約「AI Briefing」に引き継がれています。