II-A9 ハイブリッド検索行動を理解する
従来検索とAI検索を使い分ける・併用するユーザー行動の実態
このレッスンの狙い:ユーザーが検索手段を使い分ける実態を踏まえた対策を考えられる
最終更新: 2026-07-23
この記事の要点
- ユーザーが検索手段を使い分ける実態を踏まえた対策を考えられる
- 生成AIの利用経験は急拡大している
- 「検索の場面」で使う人はまだ半数以下
このレッスンでは、ユーザーが実際には従来の検索とAI検索を「どちらか一方」ではなく併用している実態を、複数の国内データから確認します。AI検索の伸びを見ると乗り換えが一気に進んでいるように錯覚しがちですが、現実のユーザー行動はもう少し緩やかで、併用(ハイブリッド)状態がしばらく続くという前提を持つことが対策の優先順位づけに直結します。前のレッスン(II-A8参照)で見た「統合型か独立型か」という区分も、同じ1人のユーザーが場面によって両方を使い分けているという前提で読み直すと理解が深まります。
生成AIの利用経験は急拡大している
日本リサーチセンター(NRC)の継続調査によれば、生成AIの利用経験率は2023年3月の3.4%から2026年3月には48.5%へ、3年間で45.1ポイント上昇しました(出典: 日本リサーチセンター, 2026年4月)。この数字は「一度でも使ったことがある人」の割合であり、検索の主手段として定着したかどうかとは別の指標である点に注意が必要です。「使ったことがある」と「日常的に頼っている」は別の軸だと意識するだけでも、AI検索の影響度を冷静に見積もれるようになります。
「検索の場面」で使う人はまだ半数以下
より検索行動に近い指標として、ICT総研の調査では、検索時に生成AIを利用する人の割合が2025年5月21.3%から2025年10月31.1%、2026年2月には37.0%へと急拡大しています(出典: ICT総研, 2026年2月)。伸び方は急速ですが、2026年2月時点でも検索の場面で生成AIを使う人はまだ半数に届いていないという読み方ができます。つまり、大多数のユーザーにとって従来の検索窓とAIツールは今のところ併存しているということです。この推移の速さを踏まえると、「今は少数派だから対応は後回しでよい」という判断も、「もう全員がAIに移行した」という前提で設計するのも、どちらも早すぎる可能性があります。
「起点」として選ばれる比率も参考になる
海外の複数調査を集計した報告では、消費者の約3割強(37%前後)がAIツールから検索を始める傾向が一致して報告されています(出典: Reporter Outreach, 2026年7月確認)。日本のICT総研データ(検索時利用37.0%)とほぼ近い水準であることも興味深く、「AIから始める人」と「まだ従来検索から始める人」がおおむね拮抗しつつAI側が伸びている、という構図が国内外で共通して見えてきます。実務では、指名検索(社名・サービス名でそのまま検索する行動)は引き続きGoogleが主戦場である一方、比較検討や「〜とは」系の調べものはAIツールに流れやすい、という使い分けの傾向を念頭に置くとよいでしょう。
ハイブリッド前提で考える意味
この「まだ半々に近い」状況は、AI検索だけに全振りする判断も、無視する判断もどちらもリスクがあることを意味します。従来のSEOで積み上げた基礎体力(クロール可能性・被リンク・構造化データなど)はAI検索でも評価の土台として使われるという関係は、編I・編IIの前半(II-A1〜II-A3参照)で触れた通りです。ユーザーが従来検索とAI検索を行き来する前提に立てば、どちらの経路から来ても同じ答えにたどり着ける情報設計が実務上の落としどころになります。たとえば、会社概要や料金ページは指名検索からもAI検索からも同じ結論にたどり着けるように整える一方、記事コンテンツは比較・調べもの系のクエリでAIに引用されやすい構造を意識する、といった役割分担で考えると整理しやすくなります。
実践ステップ
- 自社の主要ターゲット層(年代・業種)が生成AIをどの程度使っていそうか、上記データを目安に仮置きする
- 自社の問い合わせや申込みの経路に「AI検索経由と思われるもの」が混ざっていないか、流入元を確認する
- 従来のGoogle検索とAI検索の両方で、同じキーワードを自分自身で試して結果を比較する
- 両方の経路で情報の内容や結論に食い違いがないか(古い情報が残っていないか)を点検する
- 「今はAIに全振りしない」「今は無視もしない」という中間的な投資配分を関係者と確認する
- 半年後をめどにNRC・ICT総研等の最新データを見直し、併用の比率がどちらへ動いたかを追跡する
まとめ
生成AIの利用経験率は急拡大していますが、検索の場面に限ると生成AI利用者はまだ半数に届かず、従来検索との併用(ハイブリッド)状態が実態に近いといえます。国内外のデータがおおむね3割強という水準で近づいていることも、この過渡期を裏づけています。「まだ半々」だからこそ、今のうちに両方の経路へ対応しておくことが後々の差になります。ここまでのII-Aの内容を1枚に整理し直す作業は、II-A10でまとめて行います。
このレッスンはテキストとスライドで学べます。スライドは上のビューアからご覧ください。
確認テスト
選択肢をクリックすると、その場で正誤と解説が表示されます。
Q1. ICT総研の調査によれば、2026年2月時点で検索の場面において生成AIを利用する人はすでに半数を超えている。
2026年2月時点で検索時に生成AIを利用する人の割合は37.0%であり、まだ半数に届いていません。
Q2. 日本リサーチセンター(NRC)の継続調査によれば、生成AIの利用経験率は2023年3月から2026年3月にかけてどう変化したか。
生成AIの利用経験率は2023年3月の3.4%から2026年3月には48.5%へ、3年間で45.1ポイント上昇しました。
Q3. 本文が「使ったことがある」と区別して説明している、より検索行動に近い指標はどれか。
検索時に生成AIを利用する割合は、より検索行動に近い指標としてICT総研の調査で示されています。
このレッスンのFAQ
Q. 「生成AIを使ったことがある」と「検索の場面で生成AIに頼っている」は同じ意味ですか?
いいえ、別の軸です。NRCの利用経験率48.5%は「一度でも使ったことがある人」の割合であり、検索の主手段として定着したかどうかとは別の指標です。
Q. 海外調査と日本のデータは近い傾向を示していますか?
はい。海外の複数調査を集計した報告では消費者の約3割強(37%前後)がAIツールから検索を始めるとされ、日本のICT総研データ(検索時利用37.0%)とほぼ近い水準です。
Q. なぜ「ハイブリッド」という前提が対策の優先順位づけに直結するのですか?
検索の場面で生成AI利用者はまだ半数に届かず、従来検索との併用状態が実態に近いため、AI検索だけに全振りする判断も無視する判断もどちらもリスクがあるからです。